誰もいない無人駅
なるかみこ@narukamiko
その駅は、地元でもほとんど使われていない無人駅だった。一日数本しか電車が止まらず、周囲は山と田畑しかない。俺がそこに降りたのは、完全なミスだった。
スマホを見ながら電車に乗っていて、最寄り駅を寝過ごした。次に止まったのが、その無人駅だった。降りた瞬間、電車がすぐ発車した。振り返ると、赤いテールランプが闇に吸い込まれていく。
なるかみこ@narukamiko
ホームには、俺一人。駅舎は小さく、自動改札も切符売り場もない。古い木製のベンチと、色あせた時刻表だけがあった。時刻表を見ると、次の電車は「――」と表示されている。
時刻が書かれていない。そのとき、背後で足音がした。振り向くと、ホームの端に女が立っていた。いつからいたのか、まったく分からない。白っぽい服、長い髪、顔は俯いていて見えない。
「……次の電車、いつ来ますか?」
声をかけると、女はゆっくり首を振った。
なるかみこ@narukamiko
「ここ、降りる駅じゃないよ」
意味が分からず、もう一度時刻表を見た。さっきまでなかったはずの文字が、赤ペンで書き足されている。
「降車不可」
線路の向こうから、電車の音が聞こえた。
なるかみこ@narukamiko
ヘッドライトが、闇の中から近づいてくる。安心しかけた俺に、女が小さく言った。
「それ、迎えだから」
電車が駅に滑り込んできた。だが、車内灯がついていない。窓ガラスには、人の顔がびっしり貼りついていた。全員が同じ方向を見ている、俺のほうだ。女が俺の腕を掴んだ。驚くほど冷たい。
「乗ったら、戻れない」「前の人も、そうだった」
そう言って、線路の反対側を指差した。
なるかみこ@narukamiko
そこには、草むらに埋もれかけた駅名標が倒れていた。よく見ると、今いる駅と同じ名前が書かれている。ただし、下に小さくこう書かれていた。
「旧」
次の瞬間、後ろから誰かに肩を叩かれた。振り向くと、俺と同じ服を着た男が立っていた。
「やっと降りられたな」
そいつは、俺の声でそう言った。
なるかみこ@narukamiko
気づいたとき、俺は走っていた。気がつくと、見慣れた駅の改札前に立っていた。終電前の時間。
人も多い。
スマホを見ると、見覚えのない写真が保存されていた。無人駅のホーム、ベンチに座る人影が二つ。片方は、さっきの女。
もう片方は――俺だった。
ななし@K7M2rA
無人駅ってだけで怖いのに「降車不可」は反則
ななし@9QdFpS
迎えの電車=回収ってことか、顔貼りついてる描写ゾッとした
ななし@L0xA8D
同じ駅名で「旧」ついてるの好き、場所自体が更新されてる感じある
ななし@Vt4N2M
自分と同じ服のやつ出てくるのが一番怖い
完全に身代わり系じゃん
ななし@P3sWk9
写真に残ってるの後味悪すぎ、今もホームに“置いてきた自分”いるんだろ…


